世界が不公平でも、自分の意志は奪われない【自由意志】

哲学

誰も疑問を口にしない、その違和感

春、新しい生活が始まったばかりのある日。
私は職場の朝礼で、新しく導入されたルールについて説明を受けていた。内容は一言でいえば「非効率の強制」。誰もが思っていたであろう「これ、おかしくないか?」という感情を、誰も口には出さない。ただ静かにうなずくだけ。

終わった後、同僚に小声で聞いてみた。「これって意味あるのかな?」
彼女は苦笑いしながらこう言った。

「まぁ、仕方ないよね」

その「仕方ない」の一言が、ずっと心に引っかかっている。
本当に「仕方ない」のか? 誰も逆らわない空気があるから? おかしいと思っても、黙って従うしかないのか? そして何より、自分自身もその空気に飲まれそうになっていることが、怖かった。

でも心のどこかに、微かに灯るような声がある。

――「それでも私は、こうしたい」

結論:モヤモヤの正体は「自分の意志を封じることへの葛藤」

空気を読んで、波風を立てずにやり過ごす。
そのほうが楽だし、賢い選択に思える。でも、それを続けていると、自分の中の“本当の声”が、少しずつ小さくなっていく。

周りの正しさと、自分の気持ちの間で揺れるモヤモヤの正体は、「自分の意志を封じることへの葛藤」なのだと思う。

「自由意志」という希望

哲学の中に、「自由意志(じゆういし)」という考え方がある。
これは、人は自らの判断で選び、行動する力を持っているという信念だ。

もちろん、私たちは社会の中で生きている。他人の意見、空気、ルール、過去の経験…さまざまな要因が意思決定に影響を与える。けれど、その中でも「どう生きるか」「どう感じるか」を最終的に選ぶのは、自分自身だという考え方。

ストア派哲学のエピクテトスもこう語っている。

「あなたの外のものは、あなたの支配にはない。だが、あなたの心の中にあるものは、あなたの自由である。」

つまり、世界が不公平でも、誰かに否定されても、自分の“選ぶ力”までは奪われない。

私自身の迷いと、小さな選択の始まり(10代〜20代前半の春)

春、大学に入ったばかりの頃。
私はサークルやバイト、ゼミといった“新しい世界”に飛び込んでいた。周りはキラキラしていて、自分だけが少し浮いているような気もした。でもそれを表に出すのが怖くて、空気を読んで、無理に笑ったり、合わせたりしていた。

ある日、サークルの飲み会で、先輩たちが新人に「これがうちの伝統だから」と、強制的に盛り上げ役を振ってきた。場の空気は笑っているけれど、私は心底疲れていた。

そのとき、ふと頭に浮かんだのが「断ってもいいんじゃないか?」という思いだった。

言うべきか、黙るべきか――心の中で何度も葛藤した末、私は「今日は体調が良くないので」とだけ伝えて、その場を離れた。もちろん、後ろめたさもあった。でも、それ以上に、「自分で選んだ」という感覚が、心をじんわり温めてくれた。

それから少しずつ、「自分で選ぶ」ということを意識するようになった。すべてを変えることはできなくても、自分の選択に責任を持つことで、自分の人生を生きている感覚が強くなっていった。

今日からできる「自由意志ワーク」3選

①「仕方ない」を疑ってみる

日常の中で「これは仕方ない」と感じたとき、すぐに受け入れるのではなく、一度立ち止まって見直すクセをつけてみる。
「なぜそう思ったのか?」「本当はどうしたかったのか?」をノートに書き出すだけで、自分の中にある本音が少しずつ見えてくる。言語化することで、「自分の意志」が輪郭を持ちはじめる。

②一つ、自分で選ぶ練習をする

「今日は、朝ごはんを自分で選ぶ」
「この服を着たいから着る」
そんな小さな選択でいい。“誰かに合わせる”から“自分が選ぶ”へ、一日一つ意識するだけで、自分の軸がゆっくり育っていく。最初は些細に思えても、それがやがて大きな意思決定を支える土台になる。

③理不尽を可視化するノートを持つ

日々感じた違和感やモヤモヤを、スマホや手帳にメモしておく。
「何がどうおかしいと思ったのか」「なぜ納得できなかったのか」を言葉にすることで、自分の感覚が“正当なもの”として形を持ち始める。後から読み返すと、「やっぱりあのときの気持ちは正しかったんだ」と確認でき、行動の勇気につながる。

まとめ:あなたの中の“選ぶ力”は、誰にも奪えない

社会はときに理不尽で、空気は重く、声を上げるのが怖い日もある。
でも、その中でも「どう生きたいか」「何を大切にしたいか」を選ぶ力は、誰の手にもある。

たとえ声に出せなくても、心の中で「私はこう思う」と意思を持ち続けること。
それは、あなたがあなたであり続けるための小さな革命だ。

もし今日、どこかで「仕方ない」と思う瞬間があったなら、どうか少しだけ立ち止まってみてほしい。
そして、静かに問いかけてみよう。

――私は、本当はどうしたい?

その問いかけの先に、あなた自身の人生が待っている。

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